ふりむいてよキャプテン
「にっしーとケンカでもしたの?」


他の野手の人たちがバッティング練習をしている間に、投球練習をするため、ヒロくんが部室に戻ってくる。

それから荷物をあさりながら、目だけでこちらを見た。


「にっしーから聞いてない?
私たち別れたんだよ」


部活日誌を書きながら、ヒロくんの方を私もちらりと見る。


ヒロくんとはゆっちと四人で何回か遊んだりしたし、ちゃんと話しておいた方がいいのかもしれない。理由はともかく、別れた事実ぐらいは。


「は?マジで?
あみから別れたの?」

「.....うん、そう、だね」

「やっぱり。にっしーから別れるわけないからね」


決定事項のように言うヒロくんに手をとめて、なんでとつぶやくように聞けば、分かりきったことでも聞いたかのように間をおかずに答える。


「なんでって、にっしーはあみのこと大好きだろ」



今日私が体育共感室から下ろしてきたばかりの新しいボールを持って、表情も変えないヒロくん。


それは......私も知ってる。
また息ができなくなるくらいに胸に重いものが広がっていく。
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