この恋、きみ色に染めたなら
『正直言うと…もう紗季のことは想い出の中の人になってしまったのかなって、紗希ちゃんを見た時に思っちゃったんだけど。
私が肇に言ったことだから、肇も少しは前を見れそうなのかなって、ちょっと安心したわ』
店主さんの言葉に、先輩と一緒にこの店に来た時、店主さんの顔が曇ったことがあったことを思い出す。
あれは先輩との約束を思い出して?
『だけどあの子、“モデルだ”って言うからさ、本当に素直じゃないよね』
『…私はただのモデルです。
でも…店主さんとお話が出来て良かったです。
私、先輩を好きになっても、先輩には好きな人がいて叶わない…だけど気持ちを止められなくて…先輩を想えば想うほど紗季さんを忘れて、私を好きになってほしいって、先輩の気持ちを何一つ考える余裕もないほどで…。
でも今は、そのままの先輩を、私はそのまま好きでいようと思えました』
店主さんは私の言葉にニッコリと優しく微笑んでくれた。
『紗希ちゃん、ありがとう。
肇の心が今、どうなっているかは分からないけど。
ここに肇が紗希ちゃんを連れてきたということは、肇にとっても何か意味があるからだっていうことは事実だと思う。
本当は脆くて、傷つきやすい人間だけど、肇のことそんな風に想ってくれている人がいるって肇にとってもありがたいことだと思う。
だから、肇の心を癒してあげて、肇を紗季のことから乗り越えさせてあげて』
私にそんな大役が務まるかは分からない。
出来ない、その確率の方が高いと思う。
けどね、先輩。
先輩は、一人で抱えなくていいんだよ?
先輩の苦しみ、悲しみ、辛さ、私が半分背負う、背負いたい。
先輩が少しでも心から笑える日を、私は先輩と迎えたいから。
どんなに苦しくてもいい。
どんなに悲しい恋でもいい。
私は、先輩の傍にいる。
私は先輩を好きでいたい。