晴天のへきれき?
恋重荷
ひとときの
安らぎも得ぬ 苦しみは
我が身より出づ 踏み初めし
恋路にまよひ
よるべなく
あくがれまどひ
いたづらに
まつはりつきて
かのひとの 重荷となりぬ


かに かくに まだ 焦がるるか
あさましき恋の奴(やっこ)や
道すがら
ひとめ見るたび
このこころ
逸りてやまず
やすまらず
乱れてやまず
恋しさは 重荷となりぬ


過ぎ去りし 時は戻らず
すれ違ひし こころ戻らず
きざまれし おこなひ消えず
投げつけし 言の葉枯れず
ふりしぼる ちから及ばず
課せられし 重荷になへず
かへり来ぬ

むかしの日々の
かがやきは いまだ 消えざり

つくづくと
せつなし つらし
こまやかな こころづかひも
やさしさも あはれみさへも
奪ひおきて 我が身のうへは
かのひとの
恋の重荷となり果てて
朽ちゆきにけり


恋ひ恋ひて
夜の枕にうち伏せば
人にも逢はむ ほほ笑みて
語らふことの 尽きぬこと
泉のごとく
やはらかく
握りたる手の
愛(かな)しきこと 命のごとし
いとせめて ひとめなりとも
醒めてのちに逢ふよしもがな


恨みかね
思ひ むすぼれ 恋しさは
あくがれまどひ
身にあまる 重荷となりぬ
ひとときの
安らぎも得ぬ苦しみを
いづこへやらむ
いかにせむ 誰に伝へむ




 ─ 能 ─ 〝恋重荷〟より抜粋。

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