鬼伐桃史譚 英桃

 二体の『それ』は背格好からして、男だろうか。やはり生気のない青白い肌をしており、足や腕は枯れ枝のごとく細い。腰まで流れる髪はやはり女と同じ白だった。


 二体の彼らは双子のようだ。一体は右の頭部に――もう一体は左の頭部に、それぞれひとつ、同じような牛の鋭い角がある。

 そして、歌を口ずさんでいた少女もまた、切りそろえている肩までの髪は白髪で、老婆のようだった。そしてその頭部には、小さいが鋭い角が二本あった。



 彼らは十六年前、退治屋の木犀(もくさい)によって封印をされた大鬼の妻と子供たちだ。


「さあさ、まいりましょう、まいりましょう」

 歌う時と同じ声でそう言う少女の声は、どこか喜々としていた。


 大鬼の言ったとおり、大鬼の子らが目覚めてしまった。



 この十六年という月日を経て力を蓄えた彼らは奪われた大鬼を再びこの世に呼び戻すため、人間の住まう都へと移動し始めるのである。


< 26 / 94 >

この作品をシェア

pagetop