鬼伐桃史譚 英桃

「まあ、味方は多い方がいいっていうのはわかるけどね? そんなにうまくいくかな」

 南天は顎に人差し指を置いて訝(いぶか)しげにそう言った。


「だよな。なんたって、戦バカの梧桐だもんな」

 南天の意見に、いつもなら何かと反論する茜も珍(めずら)しく同意した。

 はて、『戦馬鹿』とはいったいどういう意味だろうか。梧桐は和の国の誰(たれ)よりも逞(たくま)しく凛々(りり)しい御方だと聞く。村人たちからの情報でもそのような噂は耳にしたことがない。英桃は二人の言葉に首を傾げるばかりだった。


「まあ、僕が仕入れた情報が間違っていないのなら――だけど。会えばわかるよきっと」

 南天は大袈裟(おおげさ)なため息をつく。

 尚(なお)も小首を傾げる英桃に、茜が遙(はる)か前を指さした。


「あれ? おい、英桃あれじゃねぇ? 梧桐の行列」


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