大海原を抱きしめて


雨が降ったら間違いなく車の中に入ってしまうくらい開いていた窓を閉めてほっとしたのも、つかの間。

私に向けられている声に気づいて振り返ると、若い男が3人。

大学生くらいかな。お世辞にも年上には見えなかった。

茶色い髪が眩しい。


「おねーさん、こんにちはー」


辛うじて微笑んで挨拶を返したけど、多分私の笑顔は引きつってると思う。

人見知りプラス、苦手なタイプの方々を目の前にして、私は自分を見失いそう。


「今日天気悪いねー。でも海はきれいでびっくりしたよ。こんな海、俺ら初めて」


心からそう思っているのか。

その軽い口調に信憑性は全くない。

私に話しかけるための口実に、私の大好きな海を利用しないでと思う。


「ありがとうございます」

「いいなー、いつも彼氏と一緒に海見ながらデートとかしてるんでしょ」
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