大海原を抱きしめて


朝から面倒な絡み。憂鬱だ。

喧嘩を売るような発言は、無視するに限る。

背中を向けて立ち去ろうとすると、加藤さんがポツリと呟いた。


「香乃ちゃんって、笠岡さんの扱い方上手いよね」

「扱いっていうか…笠岡さんが勝手に絡んでくるから、相手してあげてるだけで」


遊んであげてるつもりはない。

むしろ、心が乱れるのであんまり歓迎もしてない。


「そうなの?笠岡さんは楽しそうだけどね。嬉しそうっていうか」

「ああ見えて寂しがりやなんじゃないですか?私なんかにちょっかい出してくるくらいだから」


好き勝手言ってんじゃねー、と低い声が飛んできて、加藤さんと桜庭さんは笑ってる。


「なんかさ、二人見てると面白いんだよね」

「そうそう、言い争ってるはずなのに、見てて全然不快じゃないっていうか」


あんまり嬉しくない。本当に。
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