大海原を抱きしめて


あの日から一週間。

少し早い昼休憩を終えた私は再び、あの小部屋に呼び出されている。

向かい合った二つのデスクも、部屋の中も、お世辞にも片付いているとは言えない有り様。

通気性は最悪で、蒸し風呂と化している。

入って、と言われても、入り口で立ち往生してしまう。

劣悪な環境。

隅に積みあがっているファイルや書類の山が片付くだけでも、かなり違うと思うんだけど。

笠岡さんは、パソコンと向き合いながら、決して小さくはないデスクの片隅でラーメンをすすっている。

最近出前という言葉を覚えたらしい。


「香乃ちゃんに、いい報告がありまーす」


谷上さんの、気持ち悪いくらいの笑顔。

これはあんまり良くない知らせだ、と私の経験が察する。


「谷上さんがいい報告があるっていって、本当にいい報告もらったことないんですけど」

「まぁまぁ、これ見て」


渡された書類には、見覚えがある。
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