大海原を抱きしめて


「それだと、笠岡くんの送り迎えする人がいないんだよなぁ。車で来てもいいけど、次の日出勤できないし。だからって笠岡くんに飲むなって言うのも酷だよなぁ」


私は?

ていうかつまり、私にその役を買って出ろと?

そう仕向けようとしてます?


「私、笠岡さんのメイドじゃないんですよ」

「よし、香乃ちゃんに笠岡くんの送迎は頼んだ!」

「嫌です!私も飲みたい!」

「じゃあ香乃ちゃんの飲み代は俺がおごる」


聞き捨てならない餌を出されて、気持ちが変わりました。


「いくらでも送迎します」


笠岡さんの送り迎えのために飲めない飲み会が、楽しいのだろうか。

よく考えたら、損か得かもわからない。

きっとこれは暑さのせい。

暑さのせいにして何でも済むなら、この世も捨てたもんじゃないなって思う。

今日も暑い。

夏はまだまだ、終わらない。
< 283 / 435 >

この作品をシェア

pagetop