大海原を抱きしめて


「俺も一緒」

「…うれしいです」

「お前に出会えてよかった。きっと、これからもっともっと、その気持ちは大きくなっていくんだろうなって思う。一緒に幸せを感じれば感じるほど」


一緒に。

私の幸せが笠岡さんの幸せで。

笠岡さんの幸せが私の幸せで。

そんな素敵なことが、これから私を待っているらしい。

笠岡さんは触れるだけのキスを私の唇に落とした。

そしてそれだけでなにも考えられなくなる私を抱きしめて、熱くなる私の頬にもう一度キスをして、深く息を吐いた。

その吐息もとても熱くて。

これから降る雪をも解かしてしまいそう。


「香乃」

「はい」

「これからよろしくな」

「こちらこそですっ」


年の差も、経験不足も。

少しずつ埋めていけたらいいな。

そしてゆっくり、お互いに、恋人らしくなっていきたい。

笠岡さんとなら、きっと大丈夫。

私がずっと愛し続ける、この村から望む大海原みたいな人だから。


「愛される覚悟、しといて」


煌めく春は、すぐそこに。





Fin.
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