杏ちゃんも向こう側に
さらさらさらさら

両手で砂をすくい、手の隙間から落としてゆく。さらさらさらさら。手のひらにきらきらとした砂がこびりつく。

またすくう。

落とす。

さらさらさらさら

こんもりすくってもちょびっとだけすくっても、上白糖のような細やかさをもつ砂はまるで逃げるように私の手のひらから滑り落ちてゆく。

さらさらさらさら


なくなった。


空が赤い。

公園から、母親に手を引かれて去ってゆく子どもたち。今日のご飯なあに。ハンバーグ作ろうね。やったぁ。美味しいの作って、お父さん待ってようね。うん。


近所のお家から漂ってくる夕飯の香りが、私の鼻腔をくすぐる。お魚の焼ける匂い…じゅわぁ…サンマかな、もう秋だもの。


私はおもむろに立ち上がり、スカートに付着した砂を払った。


「はなよ、帰んで」


ブランコで手持ち無沙汰にしていたはなよがこちらに注目する。

うん。

と言わんばかりに大きく頷いて私に駆け寄る。

私ははなよの小さな手のひらをきゅっと握った。


「お姉ちゃん今日のご飯なに?」

私は答えた。

「鍋かな」
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