き み さ え い れ ば 。

その先の、未来


何かがガタッと動いた振動で
目を覚ました。

一瞬、自分がどこで何をしているのか
わからなかったけど、
上半身を起こしている荻野さんが見て
思い出した。


『荻野さん!
気付いたんですか?大丈夫ですか?』

「え、あぁ……まぁ、」

『よかった……ほんとによかった!』

「うぉ、」


思わず抱きついてしまったけど、
耐えきれなかった荻野さんと一緒に
そのままベッドに倒れ込んでしまった。


『よかった……』


と、安心したのも束の間、
無理にでも仕事に戻ろうとする荻野さんに
今度は大声で怒ってしまった。
起きて早々、怒るつもりで
ここにいたんじゃないのに……


こんなときだけど……
こんなときじゃないと
ゆっくり落ち着いて話せないような
気がするから……

顔を洗って、心を落ち着かせて、
病室に戻った。


『あの……
聞いて欲しいことがあるんです』

「ん、なに?」


倒れる前とは違って、
穏やかで優しい声。

この声が、この姿が、好きなんだ。



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