天才少女は嘘をつく。
 わたしはちらりと他の特別クラス生に目をやった。特別クラス生は各クラスの代表なので、みんな先頭の席に座っている。

 流奈は例外なので座席には座っていないが、他のクラスメイトは対照的な行動を取っていた。
 由衣は完全に眠っていた。首が垂れるどころではない。隣の席の子の肩にもたれかかって寝てる。
 真子はぼーっとしている。少し眠そうだ。一般的な生徒の態度といったところか。

 始業式が終わると、生徒たちはガヤガヤと話し始め、後ろから順に出て行った。
 わたしは教室に戻る生徒たちを一瞥し、階段を駆け上がった。半分ほど上ると、階段の上の壁に背中をくっつけて本を読む流奈が見えてきた。

「やっぱり流奈、あの転校生……」

「うん、あの子もわたしたちと同じ」

 わたしが言うと、流奈は興味無さそうに返事を返した。柔らかそうな黒髪を邪魔だと言わんばかりに後ろに追いやると、わたしの手を引っ張って廊下を走り出す。

「ちょっ……?!どこ行くの流奈!」

 流奈はエレベーターのボタンを押した。ここは四階。

「決まってるでしょ。特別クラスの教室。理事長だったらそこに居るはずだから」

 前言撤回。興味なさそうなのではなく、普段物事に無関心過ぎて興味ある時も無さそうに見えるだけらしい。
 彼女の横顔が近くなり、わたしはその顔に思わず見惚れてしまった。

 長い睫毛。ほとんど外に出ないのが理由の白い肌。ストレートの黒髪はいつ見てもサラサラだ。
 いつも誰もが見惚れる。それはわたしも同じで。
 これももう何回目。幼稚園からずーっと。


「どうかした、美亜」


 流奈は美しい。

 わたしはそれが妬ましい。
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