今夜、上司と恋します
それでも、

*



「坂本…」



泣き止まない私を心配する佐久間さん。
でも何で泣いてるかなんて言える筈もない。


好きだなんて言って、困らせる事はしたくない。



「大丈夫です、すみません」

「謝るな。迷惑と思ってない」

「……っ」


何でこんなに優しいんだろう。
いつもはもっと素っ気ないのに。


泣いてる時に優しくするのは卑怯だよ。
佐久間さん。



「今日はもう寝なさい。隣にいるから」

「っ、はい…」

「起きたら少しは気分も晴れるだろう」



私は声にならなくて、首を縦に振ると横になる。
佐久間さんも隣に潜ると、布団をかけてくれた。



「……手、握ってもらっても、いいですか」



これぐらい甘える事を許して。



「ああ」



佐久間さんは目尻に皺を寄せて、優しく微笑むと私の手を取った。


温かい。


それにまた涙が滲むけど、やっぱり佐久間さんの体温ってのは安心出来る。



泣き疲れた事もあり、私の瞼は自然と落ちて来て気付けば眠りに就いていた。

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