今夜、上司と恋します

*


それから私は一人で家にいるのが辛くて、美沙都に電話をした。



『はいはーい、どうしたのー。今ね、連ドラ中。ふふ』

「……っ、み、さ」

『え?ちょ、ちょっと!どうしたの!?』



呑気にドラマの話をしようとしていた美沙都は、私が泣いてるのを聞くと驚いて声が大きくなった。
電話越しでも焦ってるのが伝わって来る。



『今どこ!』

「駅、近く」

『あーそれじゃあ、私の家に来るよりも蛍の家のが近いね!
家に帰ってて!今から行くから!』

「え」

『泊まるからね!いいでしょ?』

「……うん」

『んじゃ!』



ぶつっと通話を強制終了されて、私は思わず携帯を眺める。
なんか凄い美沙都らしくて、少しだけ元気が出た。



重い足を引きずりながら、自分の家のマンションまで到着した私は顔を上げて目を見張った。



「……何で」



やっと涙が収まったのに。
何で、いるの?



「坂本」


そこに立っていたのは。
手にタバコを持っていた――――佐久間さんだった。

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