レゾンデートル 【短編】僕止めスピンオフ・2
レゾンデートル



 子供のいない夫婦が猫を買うと上手く行くというが、我々の場合、それは岡本裕という離れて暮らしてる変人の“我が子”のことを指す。朝食を摂りながら、朝のニュースで「マヤ文明のミイラ展が国立博物館で開催されています」などと聞こえると「ああ、これ絶対裕に教えなきゃ」などと言って二人でプッと噴く。東北の国立大の医学部に合格した裕に、合格祝いをしようとか言って、遠慮する裕をようやく引っ張り出し、3人で大きな都心のブックセンターに行ったのが裕と会った最後で、以来うちの息子は盆暮れ正月に顔も出すことはない。

 でもそれは、実家のも同じなようで、たまにお母さんに電話すると、裕は服を買ってくれと言う時しか連絡を寄越さないと愚痴って私に裕の様子を聞いた。親不孝な息子だ。それでもたまに電話すると、相変わらず丁寧な敬語で可愛げのない受け答えをする。まぁそれは中学生の時からの通常運転だから、それを聞くと変わりなくやってるんだろうと思うことにしている。

 私は小島隆と一緒になれた経緯を、「子連れ再婚」と冗談半分本気半分で言っている。もちろんそれは小島隆が子連れだったからだ。




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