不滅の恋人~君だけを想う~

そんな中、立ち上がって拍手を受けるジュラをフローラはジッと見つめていた。

なんだか彼の表情に違和感を覚える。


(疲れたのかしら?笑っているけど…)


どこか悲しげな微笑。

これだけの盛り上がりなのだから、もっと嬉しそうな表情をしてもいいだろうに、彼は違った。

喝采を浴びながらも冷めた様子でステージにポツンと立つジュラ。

そんな彼から目をそらせずにいると、レオンハルトに手を引かれた。

「もう行きましょう。ここはダンテの地獄以上に居心地が悪いです」

これで演奏は本当に終了らしい。

他にも席を立つ観客がちらほらいる。

夫に急かされ、胸に引っ掛かった違和感を拭えないままフローラもホールを後にした。




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