死神のお仕事


「ん?あぁ、お疲れ。もう上がっていいぞ」

「いやそうじゃなくて!」

「…何?無事終わったんだろ?」

「お、終わりましたけど!でもサエキさん忙しいって、」

「あぁ、もう終わった」


そして、「じゃあな」と、こちらにチラリと視線だけ送って、ひらりと手を振る…というか、なんだかしっしっと人を追い払う様な素振りを見せたりして…もう!ムカつく!


「〜~っ、失礼します!」


思いの他、ドアを閉める音が大きくなってしまったけど、そんなの関係なく私はリビングを飛び出した。ドスドスと強くなる足音を抑える気持ちも無く、仕事場兼サエキさんの家を後にする。


サエキさんの家からうちまでは案外近く、電車で駅一つ分しか離れていない。しかも学校もサエキさんの家と同じ駅にあるので、学校帰りそのまま寄れて、電車代も定期で補えるという何とも通勤し易い環境だったりする。

だから私は、端末を使えば一瞬で帰れたりもするけれど、未だに普通の交通手段を利用中だ。それにもし誰かに見られても嫌だし、端末持ってるよな?行ってこい、なんて急な指示が入らない事も無いんじゃないかと警戒している節もあって…うん。あり得なく無い話だ。最近のサエキさんなら大いにあり得る話。


なんだろう。最近のサエキさんは、ヤケに私を回収に行かせるのだ。もはや行かせたがってるんじゃないかと疑うレベルで。

始めこそ戸惑いが強かったけれど、今ではもうすっかり慣れっこの私だから別に良い。良いんだけど、でもこうも多くなると…なぁ…


「ちょっと荒いと思うんです、人使いが」

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