妄想ラブレター



あたしはアキの靴箱へ向かう。いつもの時間よりは人気が少ないけど、もちろん誰もいないなんて事はありえない。


それでもアキの靴箱付近に人がいなくなる瞬間はある。そんなたった一瞬を狙って、あたしはそばをウロウロ。


タイミングは一瞬だ。


これはラブレター。曲がりなりにもラブレターだ。この中には妄想だらけの恋心が綴られてる。


だから誰かに入れるところなんて見られちゃいけない。


そう思った瞬間、最後の一人が上履きに履き替え去ってゆく。



「今だ!」



鞄の中から手紙を取り出し、目当ての靴箱へと真っすぐ向かう。


アキの靴箱は下から3段目。少し身を屈んで、手紙を靴箱の奥へと押し込もうとした、その時ーー。



「……えっ」



あたしの体はピタリと止まってしまった。



< 134 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop