妄想ラブレター
むせるような夏の暑さも、うるさいセミの声も、全て置き去りにして季節は夏から秋へと移り変わろうとしていた。
あたしはこの季節が一番好きだ。
涼しくなってゆく季節に少し寂しさを感じながら景色を楽しめるし、なによりごはんも美味しいし。
ーーガタッ
あっ、前の席に誰かやってきた。
伏せていた顔を上げるとそこには……。
「今日からよろしく」
そう言ってニコニコとお日様みたいに笑う瀬戸くんがいた。
窓に背をむけて顔はあたしの方を向いて。
「前、瀬戸くんなんだ」
「みたい」
「そっか、よろしく~」
あたし達が高校生になって半年。
そしてこのクラスにも同じだけの時が流れた。
けど、瀬戸くんとはあまり話した事がない。
だから半年経った今もちょっとだけ距離を感じる。
そしてそれはたぶん瀬戸くんも感じてるに違いない。
なんとなくだけど瀬戸くんもあたしと会話する時、ちょっと手探り感あるし。