夢色約束
1週間後…



「久しぶりだな、香里奈」

そういってお茶をすする人。

大好きだけど、ここで話すのは落ち着かない。

特に、今は…。


「久しぶりだね。おかえりなさい、お父さん」


「元気か?」


「私の体調が崩れたらすぐにお父さんのところに連絡いくでしょう?」


「それはそうだが…」


「元気だよ」

安心させるように微笑んだ。


「学校は?」


「楽しいよ」


「そうか」


「うん」

短い会話。

続くようなことはない。

気まずい空気が漂う。


「それで?どうかしたの?」


「え?」


「急に帰国して、執事さんを追い払ってまで二人で話したいこと、あるんでしょう?」


「…ああ、」


「そんな顔しないでよ…」

苦しむように、顔をゆがめたお父さんは、私がそういうと、切なそうに笑った。


「…光の、こと?」


「…知っていたのか」


「だいたいは」

確信があったわけじゃない。

でも、あの屋上での会話。

最近の光の様子。

由羅の視線。

纏う空気。

表情。

わかりたくなんてないのに…

知りたくなんてなかったのに…

人は、そういうことほど、敏感に感じ取ってしまう。

そして、どれだけ時間が欲しいと願っても、待ってなんてくれないんだ。






「光くんは…」


そして、私が一番聞きたくなかった。

残酷すぎる言葉は、私が流した一粒の涙と共に静かに落とされた。

それは、まるで夢のように。

気のせいとも言えるほど、静かに。

















「……夏休みが終わればここを出ていくよ」

落とされたんだ。
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