夢色約束


お嬢様を見送って数時間後。

連絡が来た。


「はい、もしもし」


『あの、香里奈です』


「お嬢様、お待ちしておりました」


『花火が終わった頃にお願いします』


「かしこまりました、出口の方でよろしいですか?」


『はい…それから、』


「はい」


『光に、“最後の願いは、あなたが幸せでいること”だと、伝えてください』


「…かしこ、まり、ました」

本当に嫌になる。

苦しいくらい残酷な現実が。

息の根が止まるほど、首を絞めてくる、太い太い現実の縄が。

おふたりの間には分厚い壁があって。

それは目には見えなくて。

確かにそばにいるのに、決定的な距離が、そこにはあるのだ。

それ以上、縮めることのできない距離が…。


「あとで、お嬢様もお迎えにあがりますので、お待ちくださいね」


『わかりました。ありがとうございます』

どうしようもない現実への怒りを込めるように無機質な音がなる携帯を握りしめた。
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