『私』だけを見て欲しい
山崎マネージャーが作り上げたもの。
私の庭じゃない…。

(…さすがにウソはつけないな。ホントのことを言わないと…)

「あの…これを作ったのは…」


「加賀谷さんっ…!」

声と共に現れる。
さっきまでついてた寝癖がなくなってる。
お客様が来る予定だったから、キチンと整えたんだ。 

「お電話ありがとうございます。早速見に参りました」

戸部さんも一礼する。
マネージャーは彼にも挨拶して、私のリメイクした庭を見せた。

「どうですか?佐久田の作った庭は」

自分が作り上げたのに言う。
ウソはつかないと言ってたのに、こんな時はいいの!?

「見事です。何よりこの花の配色が素敵!鉢が綺麗に見えます」
「…でしょう?この間言ったこと、信じてもらえますか⁉︎ 」
「信じます。信じます。山崎さんが言ったこと、よく分かりました」

お互いに笑い合う。
意味が通じなくて、こっちはキョロキョロしてしまった。

「佐久田さんが何のことだか…って顔してますよ?」

戸部さんの言葉にハッとする。
マズい。挙動不審だったかも。

「…ごめんなさいね、内輪だけで盛り上がっちゃって。先日の商談で聞いた貴女の仕事ぶり、私が見てみたい…と言ったもんだから…」

「あ…あれは、マネージャーの単なるお世辞で…」

不出来なことは分かってる。私にはキャリアウーマンなんて向かないから。

「お世辞で褒めたりしない人よ。貴女の上司は、ちゃんと部下を見てます…」
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