『私』だけを見て欲しい
ホッとしながらもア然とする。
私よりも彼の方が、泰に関しては詳しくなってる…。

「結衣…無関心じゃ駄目だと言ったろ。もっと泰に目を向けないと…」
「でも…」

好きな人ができたら、その人しか見えなくなる。
目の前のことしか考えれなくなる。

若い時と同じように、全てを捨ててしまいたくはないけど…。


「俺のことばかり見るな。そういうのに慣れてないんだ…」

手で隠した。
いつかの商談の時と同じ。
彼のテレた顔が、目の前にある。


きゅっ…と胸がつまる。
あの時からきっと、心の中に、この人が居たんだ…。

(可愛い顔…)

オトナに言っては失礼だから口にしない。
でも、知ってる中で一番好きな顔になるかも…。

「私…もっといろんな拓斗さんが知りたい…」

娘さんのことも、どう思ってるのか聞かせて…と言った。

「生まれて2年くらいで離された。一番の可愛い頃しか知らない…」

遠い夢の出来事みたいだ…と語った。

「無関心でいたくないけど…今後も会わせてはもらえないだろうし…諦めてるよ。それに…」

顔が近づいてくる。
ドキン…と胸が鳴る。

コイビトの顔する彼に、恋する瞬間、
私の目にも

彼の顔しか映らない…。


「俺の子供…結衣が産んでくれたらいい…。その子が泰の兄弟になったら、あいつも一人じゃなくなる。絆が深まったら…皆が一つになれる…」

約束なの…?
お願いなの…?

今はどちらでもいい…
アナタの顔が…

すぐ隣にあるなら……
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