『私』だけを見て欲しい
スリリングな体験。
初めてで、いろいろ戸惑ったけど…。

「お局様、言い寄れなかったから、つまんなかったでしょうね…」

消化不良みたいな気分でいるだろう。
来週からが少し怖いかも。

「でも、僕にとっては大成功です。もう二度と言い寄られないと思うんで…」
「そう?」

そんな単純な人かな…と、思い浮かべた。

「そうですよ!これも全部、佐久田さんが隣に居てくれたお蔭…!」

マジメな声で話す。
天然なだけ…と分かってるのに、胸が鳴る。

「そんなの…幹事として当たり前のことしただけだから…」

あくまでも役目として引き受けただけ。
自分としてはそのつもりだった。
なのに…

「オレ…途中から佐久田さんの事ばっか見てました。いい人だな…って、つくづく思った…」

裏のない天然な人の言う言葉。
だから虜になるんだ…と、金井ちゃんが言った…。

「…れんや君も…いい人よ…」

握られてる指先が震える。
年下でマトモに話もしたことないのに、どうしてこんなに、胸が熱くなるんだろう…。

「照れるなぁ…そんなの言われたら…」

背ける顔が赤い。
同時にこっちまでかぁ…となった。

「や…やめよ。褒め合うの!何だかヘンだし…!」

心臓の音が早まる。
指先が熱くて、ヘンな気持ちに襲われる。

ウソだと分かってるのに、心が傾きそうになる…。

あの時と同じ。
別れた人との過去を…思い出しそうだった…。
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