バゲット慕情


 会計をすませ、目と鼻の先のマンションへと帰宅する。

マンションと店と割烹。

徒歩十分圏内が、美智子の活動範囲である。

部屋に帰れば、風呂に入って寝るだけだ。


 美智子は、風呂上がりには必ず、クローゼットの扉に張られた姿見に全身を映す。

部屋着は、飾り気のないパイル地のネグリジェだ。


「服の上から見るぶんには、変わってないんだけどねえ……」


 美智子は、若いころから豊満な体型だった。

全身にむっちりと肉が付き、胸と尻ははち切れんばかりだった。

男どもの称賛のまなざしは、つねに美智子について回った。

女どもには嫌われた。

会社勤めをしていた時期は、しょっちゅう、聞こえよがしの陰口を叩かれたものだ。

美智子は鼻で笑っていた。

女のやっかみは、いっそ心地よい。

彼女らは、男なんぞよりはるかに敏感に、女の美を発見する。


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