押してダメでも押しますけど?
6 何かが変わる時
「え?ホントに気づいてなかったんですかぁ?演技じゃなくて?」


「ダメよ、つぐみちゃん、この女にそんな技量はないわよ。」


「そうなんですか〜?てっきり、あかりさんは魔性の女だと思ってたのに〜」



目の前でビール片手に好き勝手に人の事を言っている奈々とつぐみちゃん。



そして、私の隣にはりっちゃんがいる。



どうして、この4人で飲みに来ているかと言うと、理由は簡単。


社長の待つ家に真っ直ぐ帰りたくなかったからだ。



昨日、あんなことを言われたばかりで、帰って寝るまでの時間が気まずかったから、つぐみちゃんとりっちゃんを飲みに誘った。


そこに奈々からお誘いのメールが来たので、いっそ4人で飲もうというとこになったのだが・・・。


昨日の社長の告白が明らかに私のキャパをオーバーしていたため、ちょっと相談するつもりで話してしまったのだ。



すると奈々とつぐみちゃんからの質問攻めにあい、昨日までのことを洗いざらい説明させられた。



そして、話させるだけ話させといて、今度は好き勝手言い出したのだ。



「魔性の女って何?」


「え?だって、社長があかりさんを好きなのはみんな知ってるじゃないですか〜

 それなのに、華麗にスルーするあかりさんは、実は魔性の女なんじゃないかって会社では評判ですよ。ね?律さん?」



話をふられたりっちゃんは無言で頷いた。



あっけに取られる私を見ながら、さらにつぐみちゃんは続けた。




「それなのに、ホントに気づいてなかったなんて〜マジでウケるんですけど?」



私は全然ウケないんですけど?



言葉も出ない私につぐみちゃんは更なる追い打ちをかける。



「っていうか、多分、あかりさん以外みんな知ってると思いますよ?社長の気持ち。」



「??!!」


「まぁ、私ですら気づいたくらいだからね〜」




奈々が枝豆をつまみながら言った言葉に私の頭はフリーズした。




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