探求者たちの苦悩




 清楚すぎて鈍かったんじゃないかな。
 押しても引いても、亀ほどにも動かない彼女に、自尊心を打ち砕かれたプレイボーイたちが諦めかけたその時である。

 将生が警備員として、この研究所で働きはじめたのは。


 その頃から、玲奈の言動が明らかにおかしくなった。
 誰に対しても挙動不審というか、よそよそしくも世間話をするようになって、私にも今までは全くしなかった服やメイクの話を振ってきた。


 しょっ中、将生と話す姿も目撃され、気がついたら一緒に食事をするくらいの仲へこぎつけていた。

 その頃には、逆玉狙いの男たちに大顰蹙をかったものだが。

 もちろん、将生自身は気付いていない。
 というか、ヤツが玲奈をどう思っているかは微妙なところだ。


 三城邸にも遊びに行ったらしいが、将生の態度はナチュラル過ぎて女友達の域を出ているのか判別できない。


 端目からは青春っぽい関係性を、第三者ならではの視点で楽しんでいると。
 悠真クンが制服の袖をさすり始めた。


「……で、ここ冷房でもつけてるのか? 妙に寒いぞ」

「本当。遥香さん、何か実験でもしてるんですか?」




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