麗雪神話~青銀の王国~

女王による挨拶のあと、楽団たちが自慢の腕をかけて演奏をはじめ、人々はそれに合わせて踊ったり、立食形式の食事を楽しんだりと、思い思いに過ごしていた。

セレイアは壁際でうつむき、完全に壁の花と化していた。

何度も何度もいろんな紳士から踊りに誘われたが、すべて上の空でことわっていた。

(どうして言えないのかな)

ただ一言、ごめんなさいと、言えればいいのに。

「セレイア、ほら、食事を持って来たぞ」

セレスが、両手いっぱいに料理の乗った皿をのせて、やってくる。

「これは、確かセレイアも好きなものだったんじゃないかと思って。酒類は苦手か? この果実酒は度数も低いし、豊潤でおいしい。おすすめだぞ」

「セレス…」

出会いが出会いだったものだから、彼に対していつも穿った見方をしてしまいがちだが、今日のセレイアは心底弱っていたからかもしれない、彼の優しさを受け取ることができた。

セレスはセレイアを元気づけたい一心で、こうして料理を持ってきてくれたのだ。

「このムニエルはシェフが何日もかけて―――」

セレスはまだしゃべっている。

一生懸命なその様子がおかしくて、セレイアは思わずふふ、と笑みをこぼした。

セレスが固まる。

セレイアはくすくすと、笑いながら言った。

「ありがとう」

「…………」
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