麗雪神話~青銀の王国~
思わず何度も頭を撫でていると、不意にプミールがあごをくいっと動かしてセレイアの服の袖を軽く噛んだ。

触られたことをいやがっているというのではない。その仕草はプミラで見慣れたもので、「背中に乗っていいよ」と言う意味だ。

「い…いいの?」

どきどきしながらプミールの目をのぞきこむ。

つぶらな瞳は優しげな光を宿し、肯定してくれているようだ。

こんなにきれいなプミールに乗れる機会など、滅多にあるものではない。

セレイアはまた「ちょっとだけ」と自分に言い訳をして、そっと背中にまたがってみた。

ふわふわの背中は座り心地も抜群だった。これなら鞍なしでも騎乗できそうだ。

セレイアを乗せて、プミールは少し空を飛んでくれた。

多分、サービスしてくれたんだと思う。

セレイアは思わず、子供のように声をあげて、きゃっきゃとはしゃいだ。

「あははは! ありがとう! 本当に楽しかったわ」

背を下りてからも、セレイアはしばらくプミールとじゃれあっていた。

プミールにばかり気を取られていたセレイアは、彼女とプミールの様子をじっとみつめていた第三の人影に気づいていなかった。

人影は呆然と、セレイアとプミールの触れ合いの一部始終を眺めていたのだ。

「……〈ラピストリ〉」

人影の呟きで、はじめてセレイアは人影の存在に気づき、はっと振り返った。
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