さぁ、オレと恋をしてみようか
でも千織さんは、そんな雰囲気も出してこなかった。


バックヤードで言われたあの言葉も、きっとウソだったんだ。


わたしにキスしたいなんて思ってなかったから、あんなウソ言ったんだ。


「芽衣子、賢太くんの言葉は聞かなくていいよ。賢太くんと千織くんの考えはチガウんだからね?」
「ううん、もういいよ。お母さん。お父さんも、ありがとう。部屋行くね」
「え、ちょっと芽衣子!ごはんは?」
「いらない。おやすみなさい」


もう早く1人になりたかった。リビングのドアを閉めると「ちょっと、賢太くん!どういうつもり!?さいってー!」なんて、お母さんの大きな声が聞こえてきて、わたしは思わず笑ってしまった。


お母さん、ありがとうね。そんなふうに言ってくれて、わたしは嬉しいよ。


部屋に入ってスマホを見ると、千織さんからLINEが入っていた。


【芽衣子、楽しかった?オレは楽しかったよ。また行こうな、遊園地】


それを見て、また涙が溢れてきた。摘み取るなら、早いほうがいい。


そうしたら、深い傷が残らないから…。わたしは、千織さんに返事を返した。


【わたしも今日は楽しかったです。でも、もう千織さんとはデートできません。ごめんなさい。一ヶ月間、ありがとうございました。サヨウナラ】


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