いつかウェディングベル

「どうするつもりだ?」


「まあまあ、面白い企画に変えて見せるから、明日のお楽しみで良いでしょう?」


今、透に言ってしまうと潰されそうな気がする。


かと言ってそれが明日になっても変わらないかもしれない。


でも、取り敢えずは私にチャレンジさせて欲しい。


「皆の度肝を抜くようなアイデアか?」


「それは秘密。」


「期待しているよ。」


やっとここでお互いの顔に笑みが出た。


そして、透の温かい手に包まれた頬から透の熱が伝わる。


優しいキスをされたかと思えばしっかり抱きかかえられてしまった。


「透、待って。」


「加奈子、素直になろう。お互いに求め合っているのは感じているだろう?」


卑怯だよ。今、そんなセリフ言うなんて。


だけど、


そんな透を拒めない私がいるのだから、透ばかりを責められない。


結局、この夜も透の温かい肌に包まれて眠ることになった。


やっぱり、私はこの人を忘れることは出来そうにない。


でも、このまま流されるわけにはいかないのに・・・


どうしたらいいのか、


今の私には考える時間が足りな過ぎる。




翌朝、


珍しく眠ってしまって目を覚まさなかった私に代わり、透が朝食の準備をしていてくれた。


「芳樹、目玉焼きでいいのか?」


「うん。目玉焼き好き!」


「ママはまだ寝ているお寝坊さんだね。起こしておいで。」


「はーい! パパ!」


芳樹はすっかり透に懐いたようで一緒に楽しく朝食作りをしていた。


そして、透に言われて寝室へとやってきた芳樹がベッドへと飛び乗った。


「なに?」


「ママ! 朝だよ!」


「芳樹? パパはどうしたの?」


「あっち!」


芳樹が指さすのは台所の方だ。


芳樹の笑顔につられ私まで笑顔になってしまう。


ほのぼのとした朝だ。


こんな朝を迎えることが出来るなんて夢のようだ。


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