みんなの冷蔵庫(仮)1
「何やってんの?」


てっきりシグマかと思っていたら、野崎さんが後ろ頭をボリボリ掻きながら立っていた。


「野崎さん……」


あくびをしながら怠そうに立っている野崎さんを見たら、急に涙が溢れ出た。


「野崎さぁ……ん」

「ちょ、何?」


頭一つ大きな私がいきなり抱き着いてきたのをぎこちなく受け止め、野崎さんは囁いた。


「ジュースでも飲みに行く?」


野崎さんの肩を涙で濡らしながら、私が頷こうとすると、続けて耳元に囁かれる。


「外に、さ」

「えっ……でも鍵……」


野崎さんはニヤッと唇の端を上げ、例の魅惑的な表情になった。


「私ここの使用人だったんだよ。開け閉めできるに決まってるじゃん」


この選択が正しいかどうか分からない。


でも、私は頷いた。


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