カフェには黒豹と王子様がいます
 この、いきなり抱き付いてきた人は、マスターの奥さんだった。

 家でフェアのケーキ盛り合わせの話と、コーヒーチケットの話をしたら、アイディアを出した「西口さん」を、ぜひこの目で見たいと、店にやってきたらしい。


「優ちゃんも久しぶりだわ~、たまには顔見せなさいよ」

 と言って、徳永先輩の腕をつかむ。

 徳永先輩はちょっとうつむいて、やんわりとその手を離す。

 何だろうこの雰囲気。

 徳永先輩はなるべく元子さんの顔を見ないようにしている。

「優!」

「は、はい!」

「私の顔ちゃんと見なさい!」

「……ごめんなさい」

 なんか叱られてしょんぼりしている徳永先輩が、かわいい。

「……前から思ってたんだけど、私の事避けてる?」

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