カフェには黒豹と王子様がいます
「徳永!」

 小野田が僕を呼ぶ。

「ごめん、ほんとごめん!」

 謝るな、小野田。

 もうそのまま、西口をさらって行っちまえばいいのに。



 小野田はそのままフランスへと旅立った。

 
 3年……?

 元の西口に戻ったのに、僕が3年も西口のそばにいられるわけがないだろう?

 僕は顔を見るたびに西口を突っついた。

 早くフランスに行っちまえ。

 そうして僕に新しい恋をさせてくれ。

 僕は実はこんなにもてるのに、本気になるやつは、みんな人のもの。

 僕は、西口がフランスに行けるよう、あちこちに働きかけた。

「徳永くん、西口ちゃんのそばにいて、辛くなったらいつでも相手してあげるわよ~」

 いや、竹本さんだけは勘弁してください!



 とうとう西口のフランス行きが決定し、空港に見送りに来た。 

 前を向いて歩いて行く西口を、僕たちはいつまでも見送った。


   おしまい
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