カフェには黒豹と王子様がいます
 徳永はどう思ったろう。

 見てた……よな。

 ……怒ってるかな。

 俺は外から病室を見上げた。

 徳永もあまり西口に姿を見せないようにしていたみたいだったからな。

 あまり病室の中までは入らないようにしよう。


 次の日も同じ時間に病院に行くと、病室に徳永がいた。

 俺はあわてて隠れた。

 帰ろうとすると、徳永の声がする。

「ほんとに、心臓が止まるかと思った。あの時、頭から血を流して倒れてる西口を見た時は」

 声が震えている。

 徳永が西口の前で……泣いている……。

「気が動転して、何もできなかった。マスターがいなかったら、救急車を呼ぶこともできなかった」

 西口が徳永の頬に手を伸ばす。

 心臓がつぶされそうだ。

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