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その酒を利用して今何処で何をしているのか分からない美咲の事を頭の中からかき消していた。
女ならいくらでもいるのに、どうして美咲を選んだんだろうか。
簡単に俺の事を好きと言う女ならいっぱいいる。
簡単に俺のものになってくれそうな女なら沢山いる。
なのに、俺はどうして近づいてもくれない美咲を選んだんだろうか。
そんな事、自分に問いかけても分からないまま。
酔いが気持ち悪さを増す。
昨日の今日で、更に酔いのスピードが速くて。
それを利用して客の女に好きと囁いては抱きしめて。
そんな俺は最低なんだろうと。
最低と言うか、自分でも馬鹿だなって、そう思った。
だけど、そうでもしないと俺の中から美咲を消すことは出来なかった。
これも仕事の一環。
仕事だと割り切れば、何でもできる。
「おい、お前。そろそろその辺にしとけよ」
バックヤードで俯く俺の頭上から流星の声が聞こえる。
「頭、いてぇ…」
「お前さ、酒の力借りたいほど何かあった訳?見てると分かるわ」
「……」
案外コイツは鋭かった。
鈍感そうに見えて、俺の痛い所を見つけては突っ込んでくる。
「それ以上飲むとお前きっと肝臓やられるぞ」
「……」
「入院したいのかよ。薬も効かなくなんぞ」
「……」
「もう、やめとけ」
「……」
「酒の力で解決すんじゃなくて自分自身で終わらせろよ」
「まだ始まってもねぇっつーの…」
「え、なんつった?」
「なんもねぇよ」
そう呟き俺はポケットからスマホを取り出し、打つのが面倒くさいショートメールを辞め、俺は愛莉に電話をした。
数秒なって途切れたコール。
「…翔?」
「悪いけど、会う時間ねぇわ。そっちに行く時間もねぇし」
「私が行くから。今からでも行くよ?」
「今からって、俺仕事中」
「終わってからだったらいい?」
「終わってからって1時だぞ」
「いいよ。タクシーで行くから。1時半、駅で待ってる」
どこまでコイツは強制的なんだよ。って思ってしまった。
昔っからそうだったけど。
その強制的に流されていいように扱ってしまったのは俺だけど。