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感情の勢い


数日も経てば、何も思い出そうともしなければ、思い出すこともなかった。

なのに、あと少しで店に差し掛かった時、見たくないものを目に捉える。


…美咲。


男と出くわした瞬間に、重いため息が何故か口から漏れた。

あー…見たくねーわ、マジで。

そう思い視線を逸らし足を進めていたが、何故か感情が許せなかったのか気づけば足が美咲にへと進んでた。


つまらなそうに歩く美咲の腕をグッと力づくで引っ張る。


「痛…ッ、」


密かに小さく漏れた声とともに、振り返った美咲の驚いた表情に苛立ちを抑えることは出来なかった。


「何やってんだ?」


未だに状況が掴めない美咲の腕を更に引っ張ると同時に、我がに返った美咲の顔が一瞬にして曇る。


「ちょっ、離してよ!!」


掴まれた腕を見つめなら美咲は声を張り上げた。


「無理」

「…サキちゃん誰?」

「助けてよ!!」


不意に口を割ったおっさんに俺は無意識に視線を送る。

…あぁ、マジかよ。

ざっと見て30代後半か40代前半ってとこだろう。

なるほどな。

見かけからして金持ってそうだけど。


別にこの女が今から、この男と何処行こうが勝手だけど。


つか、サキって誰だよ。

名前まで偽ってんのか?

それともその名前が本当の名前とか?


まぁ、そんな事はどうでもいい。

なのに、そう思ってても俺の感情が言う事を聞いてはくれなかった。

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