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「謝らなくていい。翔の事はちゃんと受け止めてるから」
「ごめん…」
「だから謝んなくていいよ」
タバコの煙と一緒に一息吐く。
俯いていた俺の視線に美咲が入り込み、俺は視線を上げた。
「踏ん切りつくまでもう少しだけ…」
悲しそうに見つめる美咲の後頭部に右手を添える。
反対側で持っていたタバコの火を消すと、そのまま美咲を抱え込み、美咲の肩に顔を埋めた。
「分かってる…」
「……」
「分かってるから…」
自分に言い聞かせながら呟いた美咲の言葉が何故かやけに心が苦しくなる。
美咲の腕が俺の背中に回った時、更に俺はきつく美咲を抱きしめた。
「みぃちゃん?」
「うん?」
「何もしてやれなくてゴメンな」
思わず零れ落ちたため息。
そのため息が余計に美咲を不安にするって分かっていながらも、無意識に出てくるため息を止める事など出来なかった。
「そんな事ない。私…翔に助けてもらってばっか。借りだっていっぱいあるし」
「借り?」
「うん」
「つか、何もねぇじゃん。俺、作らせた覚えねぇし」
「じゃあ、それでいいよ」
「は?意味分かんね」
ほんとに意味分かんねぇわ。
俺がいつ美咲に借りを作らせた?
思い浮かべる俺に、美咲は身体を引き離し微笑んで俺を見つめて来る。
その透き通った綺麗な顔に釘付けになってしまったのはいうまでもない。
離したくない。
こんな言葉、昔の俺が聞くと馬鹿にして嘲笑的に笑う言葉だろう。
「みぃちゃん?」
「うん?」
再びカチ合った瞳に俺は微笑み口角を上げた。
「キスしてい?」
「やだよ」
速攻返されたその言葉。
つかムードぶち壊し。
だから思わず苦笑いが漏れた。