Domain
目的地に着き、俺は車のエンジンを切る。

フロントガラスに視線を向けると、街の夜景が輝いている。

そんな夜景を目にしながら俺は美咲に視線を送った。


隣の美咲はスヤスヤと眠っていて、起こすのが可哀相なくらいだった。

だけど、このままここでこうしてる訳にもいかなくて、俺は美咲の肩に触れる。


「…美咲?」


軽く揺すっても起きない美咲に俺は声を掛け続けた。


「みぃちゃん。みぃちゃん」


美咲の身体が動く。

俯いていた顔が徐々にあがり、美咲の瞼が重そうに開く。


「大丈夫か?」


頭を擦ってる美咲に声を掛け、俺は覗き込んだ。


「あ、ごめん」


慌てたように美咲は髪を整え、振り返る。

まだその目が重そうで、少し涙目になっている。


「やっぱ疲れてる?」


疲れ切った美咲の表情にそう声を掛けると、美咲は案の定、首を振った。


「ううん。大丈夫」

「しんどかったら言えよ」

「うん。ホント大丈夫だから」


ほんと大丈夫って言葉、好きだな。

なんて思うと思わず頬が緩む。


「みぃちゃんは無理すっからなぁー…」

「それ翔でしょ?」

「俺は無理なんかしてねぇよ。…つか、着いたから降りよ」


車から降りた瞬間、ヒヤッとした冷たい風が頬を掠める。


「寒っ」


案の定、美咲も思ったらしく小さく呟き、手で腕を擦っていた。

その空いている反対側の手を俺は握る。

握った美咲の手が物凄く冷たくて、俺はギュッと握った。


「みぃちゃんの手、冷てぇな。なんでそんな冷てぇの?」

「さぁ、なんでだろう。翔の手があったかすぎるんだよ」


頬を緩める美咲に、俺も同じくフッと頬を緩める。

にしても冷たすぎ。


「綺麗だね」


店の入り口まで続く輝かしい庭。

電球のライトが植えてある花を更に輝かしくさせ、その風景に美咲は辺りを見渡していた。

そんな美咲に、俺は視線を落とし、口角を上げた。

< 487 / 587 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop