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「ちょっ、何してんのよっ、」


やっぱりコイツは違った。

俺が抱きしめると大概の女は嬉しがる。

嬉しがって、更に俺を求めようとする。

だけど、コイツは違った。

だからなのか。

俺がこの女を気になる理由。


今まで触れ合ってきた事のない女だから。


「何って、みぃちゃんから抱きついてきたんだろ」

「そう言うんじゃないよ」

「じゃあ、どう言う事?」


笑みを漏らす俺を無視するかのように美咲は視線を俺から避ける。


「うそっ…、」


小さく呟いた声はスッと周りの雑音とともに消え、美咲の表情はまた更に焦ってた。

マジ、なんだよ、こいつ。

忙しい奴。


「みぃちゃん?」


名前を呼ぶ俺の声までも届いていないらしい。

辺りを真剣に見渡し、この場を立ち去ろうとする美咲。


だけど、すぐに俺の方を向き、慌てた様子で俺の手に封筒を握らせた。


「と、とりあえずこれ返すから」


握らせて慌てて駆け出していく美咲。

そんな美咲をほっとける訳がなく気づけば俺の足も美咲を追っかけていた。


何でこんな女、気にしてんだろうと思う反面、捨てがたいと言う気持ちが湧き上がる。

どうでもいいと思っていたけど、逢うとほっとけなかった。


「おい、待てよ」


またホテル街かよ。

と思い、咄嗟に美咲の肩を掴む。


「急にどした?」


かち合った美咲の瞳が一瞬揺らぎ、その瞳はすぐに逸らされる。

そして美咲は一点を見つめた。


「おい、どうした?」


生きてんのか?ってくらいに死んだ目をしてる美咲の肩を軽く揺する。

だけど美咲には俺の声すら届いてないってくらい呆然と立ち尽くすかと思えば、勢いよく美咲の目が見開き一瞬にして駆け出した。
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