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その日は何故か、しっくりこなかった。

何に対してか自分自身、分からないが不意に落ちなかった。


あの女が高校生だったからだろうか。

いや、そんな事はどうでもいい。


「…かーえでっ!」


今から帰ろうとする明け方。人すら居なくなった街並みに、弾けた声が辺りを響かせる。

駐車場まで来た俺の背後から抱きつく様にして女が飛び着いて来た。


「あぶね、」


身体がグランと揺れたその拍子に、車体に手を付けた俺は、咄嗟に後ろを振り返る。

金髪に近い長い髪の女はどう見ても、派手を通り越した女。

その長い明るい髪は頭上で束ねてあるものの、相変わらず化粧は完璧だった。


以前、飲み会に参加した時に知り合ったミカ。

店には来ないが、こうやって待ち伏せはよくある事。


「ねぇ、今から遊ぼうよ」

「今から?」

「そう」

「何処に?」

「うーん…例えばホテルとか?」


ニコっと頬を緩ますミカに思わずため息が漏れる。

…朝っぱらからかよ。朝から抱くとかマジで無理。

むしろそんな感覚さえ、もう忘れたわ。

つーか…


「悪い。今日疲れてんだわ」


マジで今日は勘弁。

そんな俺とは対照的にミカは笑みを見せた。


「えー、この前はすんなりOKだったじゃん」

「OKって、お前を送っただけだろうが」

「じゃあキスしてよ。じゃなきゃ帰んない」


余裕の笑みなんだろうか。

その頬笑みが面倒くさいと感じる。


だけど早く帰りたいが為、俺は車体にミカの身体を押し付けた。

そのまま顔を近づけ、あと数センチと言う唇のその手前、


「…無理」


小さく呟いた。

酔い覚ましにもなんもなんねぇわ…
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