愛してるって言って
けれど、圭ちゃんはあたふたしているあたしを見てくすくすと笑っている。



「誰も見てねーよ」


「何でわかるの!?」



確かに周りには誰かいるという気配はないけれど、たまたま窓から見ていたりするかもしれないのに。



「ちゃんと周りを見てからやったから大丈夫だっつーの」


「ほんとに?」


「ん、ほんと」



そう言って、また手をぎゅっと握ってきた圭ちゃんの頬はもう元に戻っていて。


その代わりにやさしく微笑んでいる表情が視界に飛び込んできてどきんっと鼓動が跳ねる。


意地悪な顔になったかと思えば、さっきみたいに頬を真っ赤に染めるほどにかわいくなったりするし、今みたいにやさしいものにもなる。
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