俺は、お前がいいんだよ。

「そうか……。俺、今日…誕生日だった。完全に忘れてた。」


本当に、今の今まで気付いてなかったんだなぁ…。


「由依は、どうして俺の誕生日を知ってたんだ…?」


「試験前に外でお昼ご飯を食べた日があったでしょ?その時に柏木君から偶然聞いたの…。」


「あの時か……。」


小さな声で呟いた陽希。


まだ、驚きを隠せない様子だ。


「さ、さあ…食べよ?陽希、バイト終わりでお腹も空いてるでしょ…?」


部屋に入り、しゃがみながらテーブルにケーキやお皿を手早く置く。


グラスにアイスコーヒーを注ぎ終えたところで、後ろから陽希に抱きしめられた。


「俺の誕生日のために、今日…わざわざバイト先にも来てくれたのか…?」


「うん。でも、前から陽希がバイトしてるところ見てみたかった…っていうのもあるよ。」


「ケーキ、由依の手作り?」


「うん…。レモンを効かせたレアチーズケーキだから、サッパリと食べれると思う…。」


「そっか…。こうして、家に呼んでくれたのも、俺のお祝いするために考えてくれたことだったんだな…。」


陽希の方へと体を向けさせられた私。


目に映った表情は、とびきりの笑顔だった。


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