タイムトラベラー・キス

「ありがとう、送ってくれて」


「別についでだし。それより、連絡先交換しないと映画観に行けないんだけど……」


私から目線を反らし、照れながらぽつぽつと話す姿がとても可愛らしい。
あんなに大きな体が一回り小さくなったように見える。

それにしても、今まで私たちは連絡先すら知らない関係だったのか。
タイムトラベルしてから、スマホに野々村くんの情報が入っていないことに気づきもしなかった。



「そうだね、交換しよう」


私たちはお互いのスマホを手に持って、連絡先を交換した。


あまり仲の良くなかった私たちの距離が、一歩近づいた瞬間。
……この瞬間から、長い長い私たちの付き合いが始まったのかな。

そうだとしたら、今この瞬間は私のいる未来へとつながる、大切な瞬間なのだろう。


この場に立ち会えて、初めてタイムトラベルして良かったと思えた。
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