タイムトラベラー・キス

”PS 野々村くんとの関係を絶対壊さないでね♡
   いろんなことを求められると思うけど、拒否しないでね、絶対♡”


ふと、頭の中で手紙の一文が浮かび上がった。
”いろんなこと”って、やっぱり、そういうことだよね。
”拒否しないでね”って言われても……どうしたらいいかわからないよ。


『お風呂が沸きました』という機械的なアナウンスが流れた頃には、野々村もたばこを吸い終わりソファへに戻っていた。


あの手紙には、毎日一緒にお風呂に入っていた、なんてことは書いてなかった。
書き忘れたのか、別々に入っていたのかも分からない。

お風呂も沸いてしまったし、もう考えている時間もない。
窮地に陥った私は、とっさに思いついた言葉を口にした。


「い、一番風呂入ってきたら」


「いいの?いつもお前が先に入ってるのに」


……よかった。毎日一緒にお風呂に入ってるわけではないみたい。
安心して、心の中で、深くて長い溜息をする。

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