今しかない、この瞬間を
泣いている本当の理由も知らないくせに、慰めようとしてくれる優しい彼が好き。

辛くても、苦しくても、私は自分の好きな人に、こんな風に守られてる。


これは幸せなの?

それとも、幸せじゃないの?

彼の腕の中にいると、わからなくなって来る。


話を聞く限り、彼の恋が実りのあるものだとは思えない。

どっち道、私には見守ることしかできないけど、本当に彼がそれを望んで幸せだと思っているのか、どうしても疑問に思ってしまう。


それから、私は彼にとって、どんな存在なんだろう。

考えれば考えるほどわからない。

だけど、離れたくはない.......


「じゃあ、好きな人に思いが通じるまでは、何かあったら、俺に言って。」

「え?」

「痴漢から助けてやったついで? またあの顔してたら、慰めてやるから。」

「うん。....... でも、いいの?」

「何が?」

「そんなことして、彼女は嫌がらないの?」

「そういう関係じゃないから、多分、何にも言わないよ。」

「ほんとに?」

「うん、気にしなくていいよ。」

「.......わかった。ありがとう。」


どういうつもりで、そう言ってるの?

人の気も知らないで、こんな提案するなんてヒドい奴。

嬉しいのに、苦しい。

胸の奥がギュッと締め付けられる思いだ。


と同時に、彼の朱美さんに対する気持ちが理解できないから心配になる。

彼も本当は苦しいんじゃないの?

愛してないなら、なぜ、そこまで彼女にこだわるの?


わからないことだらけで、モヤモヤする。

モヤモヤするから不安でたまらなくなる。


その不安をゴマかすように、自分から彼の胸に顔を埋めて、背中に腕を回してみた。

彼の匂いに完全に包まれたら、ほんの少しだけだけど、心が軽くなったような気がした。
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