今しかない、この瞬間を
目の前からいなくなってしまっても、俺は親父の自慢の息子でいたかった。

夢中でボールを追いかけていれば、それは叶う気がして、中学ではますます部活にのめり込んだ。


そんな俺を母さんも変わらず応援してくれたし、それで家族の絆は深まると思った。

天国で親父も必ず見てくれていると信じていたし、子供なりに、俺が頑張ることで、家族三人の幸せを守っているようなつもりでいた。


寂しいと思うこともあったけど、そうして何とか二人で暮らして行くうち、月日は過ぎ、中三になって、進学の話が持ち上がるようになった。

母子家庭の経済事情を考えれば、近所の公立高校に進むのが当たり前だと普通に考えていた俺のところに、スポーツ推薦の誘いが舞い込んだ。


誘ってくれたのは、県内一の強豪校。

頑張り次第では、国立を目指せるチームを有する学校だ。


設備も、指導陣もしっかりした学校だし、何より高校サッカーの全国大会に出られるかもしれない。

俺自身、ずっと憧れていたことでもあるし、それは親父の夢でもある。

叶えられるものなら、叶えたい。


でも、すぐには飛びつく気にはなれなかった。

サッカー部に所属することで条件で、大会などのの活躍に寄っては学費も一部免除とあるが、それでも私立高校の学費は高いし、スポーツ推薦にはリスクもあるからだ。


思うように成績が残せないことだって、ケガや病気で退部せざるを得ない事態になることだって、十分あり得る。

もし、運よく活躍できたとしても、サッカーを続けること自体にもお金はかかるんだから、この学校に進めば、どっち道、母さんに無理をさせることになる。

そう思うと、迷って、俺はなかなか決断ができないでいた。
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