敏腕社長に拾われました。
「わかってるよ。ちゃんとしたプロポーズは……まあ、期待しとけ」
頭をクシャッとかき乱されて目を開けると、虎之助の顔が少し赤いことに気づく。
「あれ? もしかして虎之助、照れてるとか?」
「は? 俺が照れる? そんなことあるか!」
虎之助はそう言うと、クルッと反転して背中を見せた。
ねえ虎之助、その反応は照れてるって認めてるようなものだけど?
勝手極まりない俺様な虎之助の、ちょっと意外な一面に頬が緩む。
「虎之助、可愛い」
そうボソッと呟いて、自分から虎之助の背中に抱きついた。
「もうすぐ三十の男に可愛いとか言うな、バカ」
「だってバカだし。でもそんなバカのことが、虎之助は好きなんでしょ?」
「勝手に言ってろ」
虎之助は面倒くさそうにそう言うけれど、触れ合っている肌から伝わる熱は勢い良く上昇していて、鼓動も速くなっている。
(仮)のプロポーズだけど、虎之助の言葉なら信じられる。噂なんかに惑わされないで、私は自分の気持ちに素直になって、この局面を乗り越えたい。永田さんは手強いけれど、虎之助と一緒ならどんなことでも耐えられる。
だから、ずっとそばに居てね──
「ん? 今なんか言った?」
「ううん、なんにも」
そして私も絶対に虎之助から離れない……そう誓うと、ゆっくり目を閉じた。