敏腕社長に拾われました。

仕事が終わって家路につくと、不安な気持ちが押し寄せてくる。

虎之助が出張から戻ってくるのは金曜日。その日までに答えを出すべきなのかどうなのか、正直なところ迷っていた。

虎之助のそばにずっと居たいけれど、詩織さんが言っていることも理解できて。私の想いだけで、虎之助のこの先の人生をダメにはしたくない、虎之助にはもっともっと高くまで登っていって欲しい。

その思いが私の中で、日に日に大きくなっていて。だったらやっぱり、私が虎之助の前からいなくなれば解決するんじゃない?とか思ってしまう。

虎之助が帰ってくるまで、あと二日。どうするの、智乃?

心の中のもうひとりの自分に、そう問いかけてみると……。

虎之助と顔を合わせる前にマンションを出る──

そんな、自分にとって最悪な答えが出てしまった。

まだ虎之助と出会って二ヶ月。最初はお金が貯まるまでの居候だったけれど、そのあと付き合うことになって今は恋人として一緒にいる。もちろん虎之助のことは、今でも大好き。別れるなんてこと、これっぽっちも考えたことはない。ずっと今のまま、虎之助の隣に居たいけれど。

マンションを出るかぁ……。

そのことばかり考えていたら、二日後はあっという間に訪れてしまった。



< 202 / 248 >

この作品をシェア

pagetop